息子と最後の面会
6月中旬に遠方に住む息子が忙しい仕事を何とか調整して帰省してくれました。厳重な感染防止対策を行ったうえで妻(息子にとっては母)との面会も許可されました。面会の前には妻の友達でもある看護師さんが、妻の服の着替えやメイクまで行って下さいました。息子に会うまでは凛として存たいという思いが、周りの人達にも伝わっていたようです。恐らく最後となる息子と時間を大切にしてもらいたいと思い、自分も妻に会いたい思いはいっぱいでしたが、同席はしませんでした。1泊2日の慌ただしい日程を終えて息子が帰宅の途について数時間後に病院から、妻の様態が良くないとの連絡を受け病院に急いで向かいました。
最後の結婚記念日
病院で主治医や担当の皆さんとの面談の中で、インフォームドコンセントしてモルヒネ投与等を含めた終末の緩和ケアについて説明を受けました。忍耐強い妻は、あまり自己主張せずに我慢する傾向があるので、なるべく痛みを和らげて欲しいとお願いしました。終末の日が遠くないとのことで、個室に移る事とコロナ禍での感染防止対策を講じたうえで自分と娘に付き添いの許可を頂きました。この事については、現在でも本当に感謝しています。おそらく二人で迎える最後の結婚記念日には、妻が好きな香りのアロマオイルのセットと妻が育てていた薔薇の花が咲いてくれましたので、感謝の手紙と一緒に添えて妻に渡しました。
人への思いやりの心
妻は、とても喜んでくれて好きな香りのアロマオイルをパジャマの胸元に添えて欲しいとリクエストしてくれました。それから後、自分や娘にアロマオイルの香りを指定して届けるように度々リクエストしてくるので、何故かなと思っていましたが妻の希望は何でも叶えたいので、現品がみつからない物はネットで捜して届けていました。妻は、お世話になっている看護師さんやリハビリ担当の理学療法士さんに感謝の気持ちを込めて、その方のイメージにあったアロマオイルの香りをプレゼントしていたのです。モルヒネの副作用なのか激しい嘔吐の症状が出ていてつらい筈なのに、人への感謝の気持ちを忘れない妻に改めて頭の下がる思いでした。この頃には言葉での会話が出来なくなり、看護師さんが作ってくれたイラストボードや文字盤でのコミュニケーションになっていました。