⑴防犯講座のリアリティ
よく私の防犯講座は、リアリティがありすぎて怖いと受講された方から感想を言われる事があります。現在まで日本は世界的にも治安の良い国で、防犯講座や教室で教えられている先生も暴力を伴う事象を体験されたことがない方も多いようです。そういう私自身も電車内で薬物中毒の方を取り押さえ保護した事も含めても暴力を伴う事件に巻き込まれた事は4回だけです。(4回が多いと思われるか少ないと思われるかは、分かりません。)駅での「さすまた」という防犯用具を使っての講習をお願いされた時は、正直困ってしまいました。この用具は比較的に距離のある場所から暴漢の動きを封じることを意図して作成されたものみたいですが、前回でも少し述べましたが構造的な欠陥があって、あまり役に立たないのです。「さすまた」は長い棒の先に二股に別れた金属製の棒状が付いた形状ですが、暴漢から一気に距離を詰められると、殆ど使用できませんし、暴漢が二股部分を手に持って押し返すと負けてしまうのです。(てこの原理を思い浮かべてみるとわかると思います。)敢えて「さすまた」を使うのであれば、棒状の先端部分で暴漢の腹部を突くとか、二股部分で顔面を横から殴打するのが有効だと思いますが、これを言うとドン引きされます。
⑵暴力を伴う事件に脚本等はありません。
護身術の関節技を使った講習にしても、関節技を決めた後を教えているケースは少ないように感じます。素人が短時間の講習で関節技を習得すること自体が不可能に近いのですが、仮に万が一でも関節技が決まった後はどうするのですか?暴漢が、「私が悪うございました。お許し下さい。」等とドラマのように、そこで諦めてくれるケースなどありません。講習会では、暴漢役になった先生と受講者が関節技が決まった後で笑顔で握手されているシーンも見受けられますが、現実には暴漢は死に物狂いで暴れ続けて襲い掛かります。電車内で薬物中毒の方が暴れたケースも薬物の影響でしょうか、比較的小柄な男性でしたが予想以上に凄い力で、取り押さえ保護するのに手こずりました。夜の繫華街で乱闘に巻き込まれてしまった時は、同僚は柔道の有段者で相手の一人を投げ飛ばしたのですが、路面に相手が落ちる時にショックを和らげようとしてあげた手を嚙まれ、指を食いちぎられそうな大怪我を負いました。また途中で反社会的組織の人達と思われる方たちが刃物を持って乱入して騒ぎが、より大きくなりました。その後、パトカーが道の両側から挟み込むように到着して、必死で逃げましたが保護もしくは確保されていれば事情を詳しく聴取され場合によっては社会的なペナルティーを受けることになったでしょうし、乱入してきた反社会的な人達に連れて行かれても、それはそれでとても恐いものがあります。このように暴力を伴う事件にシナリオやストーリー等は無いのです。
⑶命を守ることが何より大切です。
よく警察が暴漢を取り押さえるシーン等がニュースや特番で流されていますが、彼らは一般人からみればプロであり、お仕事の一つですが、テレビ等でご覧になって分かるように基本は集団で対応して取り押さえるのです。暴漢の動きを封じて、折り重なるように複数人が上から覆いかぶさり動きを封じて、犯人を「確保」します。私の空手教室の生徒も何人も警察官になっていますが、覆いかぶさる最初の一人は若くて階級が下の警察官が行くのが暗黙のルールみたいで大変だという話しを聞かせて貰ったこともあります。日常生活の中で、集団で暴漢を取り押さえる機会などありませんし訓練も行いません。だからこそ弱者の護身術は危険回避が大切なのです。暴漢から時間を稼ぎ逃げること、距離を置くこと、お客様を避難誘導すること、危険回避の一点に絞って開催しています。命を守ることこそが何よりも大切です。私が主催する防犯教室も、私自身が若くもイケメンでもない仏頂面のお爺さんなので、場が固くなりがちなのは事実ですので、若くてイケメンの空手教室時代の生徒達に同行をお願いするなどして、出来るだけ和やかに進められるように努めています。
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