守るべきは命です

過剰防衛で罪になる

防犯講座の時に刃物などの武器を持った犯人から身を守る為に、「さすまた」のようなあまり役に立たない防犯用具ではなくて、近くにあるのなら野球用のバットや木刀などを用いた方が現実的ですというお話をすると、後で過剰防衛などの罪に問われませんか?という質問を受けた事があります。残念ながらケースバイケースで過剰防衛の罪に問われる心配はありませんと言えないのが現状です。犯人が持っていた武器の種類、反撃した方が男性か女性か、大人か子供か、体格が大きいか小さいか、反撃した状況など、事件を担当した警察官や検事さんの防犯に対する知識によっても罪に問われるかどうかは違ってきます。多少なりとも実践的な経験値がある方なら「さすまた」が役に立たないことは理解されていますが、そうでない方は近くに「さすまた」が備えられているのに、野球用バットや木刀で応戦してしまうと過剰防衛と判断される可能性が無いとは言えないのが現実です。

かけがえのないもの

かけがえのないものは、もちろん生命です。自分の行っている防犯講座は過剰防衛などの事態にならない為にも、常日頃から防犯意識を持つ事。危険な場所や状況に近づかない事。遭遇してしまったら立ち向かわずに逃げること。危険回避行動を第一に受講者の皆さまにお願いしています。当たり前のことようですが暗い夜道を1人で出歩かない、歩きスマホやイヤホン使用はしないこと、部屋に入る前に必ず背後を確認するなどで犯罪を未然に防げることもあります。ただ残念ながら、やむを得ず刃物を持った犯人に立ち向かわなければならないケースも出てきます。実際にどんな形であれ犯人を攻撃不能状態にしなければ危険な状況を終わらせることは出来ません。だからこそ殆ど役に立たない「さすまた」での対応訓練や関節技の手ほどきではなく、命を守る為の護身術を講習しています。かけがえのない命を落としてしまったら過剰防衛などの話以前の問題になります。あくまでも自分個人の認識ですが、自己の命と愛する人達を守り通せるなら過剰防衛での理由で立件などの結果は致し方無いと思います。

犯人の初期命令に従わない

例えば銀行や学校や宝石店等に犯人が押し入った初期の段階で「動くな」「壁際に並べ」などの犯罪初期の命令を出す場合があります。これは単独犯や少数犯の場合、周りの多数の人間をコントロール下におきたい為に発するものです。この場合において、恐怖のあまり意識が低下して犯人の命令通りに従ってしまうと、周りの人達も追随して、その後も犯人に行動の主導権を握られてしまいます。逃げることが可能な人は速やかに逃げて下さい。通報できる人は速やかに通報して下さい。バラバラに行動すること自体が犯人の判断力を分散させて焦らせることになります。また不幸にも怪我を負った人がいる場合で、怪我人の傍に犯人が居るケースは、非情なようですが直ちに手当てに走り寄ると怪我を負わされてしまう状況になりますので避けて下さい。ある意味では、この犯罪初期の行動が被害を拡大させるか最小限に抑えられるかのポイントになります。宝石店に押し入った強盗犯が奥からプロレスラーか力士ばりに体格の良い店員さんの上から叩く「さすまた」(さすまたを敢えて使うとしたら上から叩くか棒の部分で突くのが正解です。)に恐れをなして逃走してしまった事件もありました。無差別に襲うことを目的としたり、犯人の精神が錯乱していたりと、犯罪発生のケースは千差万別です。日頃から防犯のイメージトレーニング等を行って命を守ることを心がけて頂けたら幸いです。防犯講座に関しては、お気軽にお問い合わせください。

行政書士 辻賢一事務所